相続のホームドクター30選

相続基本編 相続人と基礎控除「養子縁組は否認される場合も」


相談者


前回のお話で相続税の仕組みは分かりました。それでは、「相続人」や「基礎控除」額はどうやって計算するのでしょうか?


相続税のホームドクター


まず基礎控除ですが、これは参千万円に、法定相続人一人当たり六百万円を加えた額(平成27年改正)とされています。例えば、残された家族が被相続人の母と妻と子供三人の計五人とすれば法定相続人はこの場合、妻・子三人の計4人ということになります。この場合の基礎控除額は参千万円に、六百万×四人の二千四百万円を加えた五千四百万円が「基礎控除」の額ということです。


相談者


養子もその数だけ法定相続人に加えて基礎控除の額を計算すればよいのでしょうか?


相続税のホームドクター


その通りですが、相続税法では、この養子の数は被相続人に実子がある場合には一人、実子がない場合には二人迄に制限しています。
これは、節税策として養子を多数縁組し、課税上伴害が起きた事例が多発したために養子に人数に制限が設けられることになったからです。
これは税法上だけの規制であり、養子について民法上の相続権に影響を与えるものではないとされています。
ただ、一般に養子の数は一人または二人までは無条件に認められると言うのは誤解で、養子を法定相続人の数に算入することが相続税の負担を不当に減少させる結果となると認められる場合は、これを否認するという規定があるので注意が必要です。
つまり、養子縁組も税金が安くなるからと言った理由だけでは、否認される場合があるということです。


相談者


では、法定相続人で相続を放棄した人がいる場合や、被相続人の子で、すでに死亡した者に子供が二人いる場合の相続人数や基礎控除の額はどうなるでしょうか?


相続税のホームドクター


相続を放棄した人がいても、放棄がなかったものとして相続人に加えて計算することになっています。

また、被相続人の子で、親の死亡する前に死亡した子の子供、被相続人にすれば孫ですが、この孫は死んだ父の代わりに相続人になるので、これを代襲相続人と言います。この代襲相続人が二人いれば相続人は二人と計算することになっています。
したがって、代襲相続人が多ければ、それだけ基礎控除の額は増えることになり、税額計算は有利となります。

また、相続開始の時に妻に胎児がいる場合は、生きて生まれて来ることで相続人に加えることとなっています。
子が代襲相続人となる場合として、専門的な話になりますが、「本来の相続人が欠格事由に触れ又は、廃除原因に概当して相続権を失った場合もその者の子が代襲相続人となる」とされています。「欠格・廃除」とは耳なれない言葉ですが、いずれ改めて解説することとします。


※平成30年4月1日現在の法令に基づいて作成しております。