相続のホームドクター30選

相続の生前対策編 Ⅱ 贈与と譲与税①「民法に定期・負担付・死因の規定」


相談者


以前、確かこのシリーズで「相続の生前対策」として贈与の話がでたことがありましたが、また、相続税と贈与税の比較で贈与税が高いこととその理由もわかりました。
そこで、この度、父からアパートを孫たちに贈与したいが注意することはないでしょうか?


相続税のホームドクター


改めて「贈与」について検討してみましょう。

さて、「贈与」とは言うまでもなく民法では「…自己の財産を無償にて…与える意思を表示し、相手方が受諾を為すに因りて、その効力を生ずる契約の一種」とされています。

民法上の「贈与」は、書面でなくても口頭だけでも成立するとされる。だが、書面によらない贈与は「履行の完了」した部分を除いて撤回ができる、と定め、軽率な贈与を取り消せる余地を残した。

この「履行の完了」とは動産・不動産については引渡しをした時とされており、また、この様な引き渡しがなくても、「登記の移転」があれば履行の完了があったとされている。
預金などについては、名義変更、受贈者の口座に振替の手続が完了した時、といって良いでしょう。

さて、贈与は一般に考えられる単純な贈与の他に、民法は定期贈与・負担付贈与・死因贈与について規定している。
「定期贈与」とは、毎月又は毎年という定期的に継続して一定の財産を贈与する、というものだ。
この「定期贈与」については、「定期贈与」については、「定期金の贈与」として課税が行なわれるケースもある。
更に「負担付贈与」とは、贈与を受けるものが何らかの負担をする場合を言うのだ。
これについては、税法は通常の単純な贈与とは異なった取扱いをすること、とされているので要注意。このことを知らずに行った負担付贈与が思わぬ多額な税負担となる場合もある。

「死因贈与」は、贈与者の死亡を効力発生条件とした贈与だ。従って「遺贈」による財産の無償贈与に似ているので、税法上も「遺贈」によって遺産を取得した場合と異ならない、として遺贈に含めて相続税を課税する、としているのです。

更に「死因贈与」は契約であるとしても、遺言と同様、いつでも取り消しができる、とされている。
だが、死因贈与により不動産を貰う、という約束・契約をした場合には贈与者の承諾を得て「所得権移転の仮登記」ができ、更に「贈与の執行者」を定めておくことにより、執行者の権限で本登記を行なうことができる、という意見もあるので、どうしても相続したい財産がある、生前贈与を受けるにしても贈与税の負担ができない、という向きには傾聴に値する考えだろう。


※平成30年4月1日現在の法令に基づいて作成しております。