相続のホームドクター30選

相続の生前対策編 前提条件⑪「土地の物納は計画的に」


相談者


先日、土地を相続したのですが、預貯金も少なく、税金が払えません。何か良い方法は?


相続税のホームドクター


相続が発生し相続税を払う場合、金銭で納めることが困難なときは、代わりに不動産や証券など、物で納めることもできます。
このことを、一般的に「相続税の物納」といいます。しかし、誰でも簡単に物納ができるわけではありません。

相続税の物納の許可を受けるためには、
①金銭一括納付はもちろん、延納(分割払い)によっても納付することが困難である
②納期限までに物納に充てようとする、財産の種類および価格などを記載した物納申請書を税務署に提出すること
③物納申請財産が定められた種類の財産であり、かつ定められた順位によっていること
④物納財産は「物納適格財産」すなわち、国が管理または処分するのに適したものであること―以上の四つの条件を満たさなければなりません。

物納で相続対策に有効なのは、土地の物納です。
土地を物納する場合の手続には、隣接した土地の所有者との境界線を確認が必要です。
貸し付けている土地を物納する場合には、借り手との賃借している土地の範囲を確認が必要になります。
建物が建っている土地の正確な位置が必要です。
また、登記してある面積と実際の面積が違う場合は、更正登記します。

相続財産に複数の不動産がある場合は、その中で相続人にとって必要性の低い不動産を物納申請することがポイントです。

一般的には、最も残しておく必要性があるのが自宅で、次に駐車場やアパートなどの貸し付けている不動産です。
逆に物納に向いているのは、貸宅地や別荘地などです。
相続税評価額が推定時価を上回っている土地や、一般的な市場では売却しづらい土地も物納申請に適しているといえます。

次に、不動産を一旦売却してから金銭で納税した場合と物納とを比較すると、その不動産の売却益に対して税金(所得税等)が課せられますので、売却で得た額から税引き後の金銭で相続税を納付しなければなりません。
しかし、物納の場合には、不動産の売却にかかわる税金が課せられませんので、その分だけ節税になります。

相続対策は、生前から物納を視野に入れた計画づくりが大切です。
しかし、相続財産や相続人に多額の預貯金がある場合は、物納したくても、優先的に預貯金を納税にあてなければなりません。
したがって、物納制度の利用を検討している場合は、生前において、預貯金を他の資産に組み替えることも必要です。

また、物納は、測量費用や登記費用、コンサルティング費用など多くの費用がかかります。
しかし、この費用は、相続発生前において推定被相続人が費用を負担することで相続財産が減少し、結果的に相続税の節税になります。


物納申請件数の推移

※平成30年4月1日現在の法令に基づいて作成しております。