相続のホームドクター30選

相続手続の流れ②「戸籍謄本を精査、遺言書検認も」


相談者


前回で、相続後に行うべき手続きのスケジュールはわかりましたが、相続関係人等について教えてください。


相続税のホームドクター


四番目は「相続人の確定」だ。
普通の相続事案では、複雑なケースは少ないが、養子縁組や離縁、非嫡出子の認知、離婚・再婚、代襲相続などの場合には戸籍謄本で精査をする必要がある。

被相続人の出生から、死亡迄の全ての戸籍謄本が必要とされるわけだ。
更に相続人全員の戸籍謄本も必要とされることは言うまでもない。
特に、「相続時精算課税制度」における「持ち戻し」の規定は、離縁した養子に対して贈与した財産も相続財産に加算して申告する、とされているので、心当たりのある者には入念な調査が必要となる。

被相続人や、その直系尊属の本籍地が遠隔地にある場合には直接、その市町村に出掛けるか、郵送で手配することになるので早目に手配することが肝心だ。
必要部数は相続税の申告も考えると最低2通が必要となる。

五番目は「特別代理人の選任」だ。
相続人の中には未成年者がいる場合や、知的障害者・認知症高齢者がおりその後見人が相続人である場合には、遺産分割に際して利益相反となるため、家庭裁判所に「特別代理人」の選任を申立てることとなる。但し、「後見監督人」がある場合にはこの限りに非ずる、とされているのだ。

書式や手続きは地域の管轄家裁で教えてくれるし、別段難しいことではないが、遺産分割の原案を要求される場合があるので、この分割案がないと申立てが出来ない場合もある。
従ってあらかじめ遺産分割協議をすませないと申立てが出来ないと言うわけだ。

六番目は「遺言書の検認」だ。
以前にも触れたが「公正証書遺言書」以外の「遺言書」は、すべて原則として遺言者の住所地の家庭裁判所に「検認」を要求しなければならないとされている。
「検認」とは、その遺言書の保存を確実にする目的の、一種の検証手続とされており、遺言書の現状をありのままに確認するだけで、遺言書の内容の真否・有効無効を判定するものではない、と言われている。

従って、検認を受けた遺言書の効力を争うこともあるのだ。
検認」は、遺言書の保管者や、発見者は相続開始後、遅滞なく家庭裁判所に提出しなければならないとされており、また、封印のある遺言書は家庭裁判所において相続人等の立会いの下でなければ開封することができないとなっている。
この検認を受けるためには相続人の確定をするため、前述の被相続人の出生から死亡迄の戸籍謄本と相続人全員の戸籍謄本が必要とされるので、これも必要部数に入れておきたい。

更に、検認の手続を怠り、検認を受けずに遺言を執行するとか、家庭裁判所以外の場合で封印のある遺言書を開封した者は五万円以内の過科に処せられる、となっているので慎重な取り扱いをしたいものだ。
もっともこの手続に違反しても遺言の効力には影響しない、とある。
この辺りのことは不審に思われるが自筆証書・秘密証書の遺言書は、もともと厳格な要式を要求されており、これに反する遺言書は効力がない、とされていることに由来するのかな。

さて、検認が済むと遺言書に従い、不動産の登記申請、預金の名義変更をすることができることとなる。この登記・名義変更は、公正証書遺言と同様相続人の同意は不要とされている。


※平成30年4月1日現在の法令に基づいて作成しております。