相続のホームドクター30選

相続の生前対策編 前提条件⑤「贈与税の二つの非課税制度」


相談者


贈与の確認について、先回の5つの注意点良くわかりました。
それでは、配偶者への居住用財産の贈与の非課税特例があると思いますが、この点について、詳しく教えて下さい。


相続税のホームドクター


贈与を使った生前相続としては、配偶者への居住用資産の贈与と、両親・祖父母・養父母からの住宅取得資金の贈与があります。
配偶者への贈与は、居住用財産や居住用不動産を取得するための資金の場合、配偶者控除が利用できます(配偶者への居住用財産の生前贈与の非課税の特例)。

この控除額は二千万円で、基礎控除の百十万円と合わせて最高で二千百十万円が無税になります。
要点は次の表のとおりです。



この非課税の特例を受けるための手続き


非課税の特例の適用を受けるためには、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に、非課税の特例の適用を受ける旨を記載した贈与税の申告書に計算明細書、戸籍の謄本、登記事項証明書、新築や取得の契約書の写しなど一定の書類を添付して、納税地の所轄税務署に提出する必要があります。

社会保障・税番号制度〈マイナンバー制度〉が導入されたことに伴い、個人番号を記載した各種申告書、申請書、届出書等を提出する際には、個人番号カード等の一定の本人確認書類の提示又は写しの添付が必要になります。


相談者


次に、住宅資金の贈与の非課税制度について、宜しくお願いします。


相続税のホームドクター


両親・祖父母・養父母からの住宅取得資金の贈与は、新たに住宅を新築・取得・増改築(以下新築等)する場合に限り、その贈与により取得した住宅取得場合には、(既に適用を受けた金額を控除した残額)次の一定の金額までについては、贈与税の課税価格には、算入しません(直系尊属から住宅資金の贈与を受けた場合の非課税の特例)。
要点は次のとおりです。


1、制度のあらまし


平成27年1月1日から平成31年6月30日までの間に、父母や祖父母などの直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた受贈者が、贈与を受けた年の翌年3月15日までにその住宅取得等資金を自己の居住の用に供する家屋の新築若しくは取得又はその増改築等の対価に充てて新築若しくは取得又は増改築等をし、その家屋を同日までに自己の居住の用に供したとき又は同日後遅滞なく自己の居住の用に供することが確実であると見込まれるときには、住宅取得等資金のうち一定金額について贈与税が非課税となります。

2、非課税特例の要件

次の要件の全てを満たす受贈者が非課税の特例の対象となります。

(1)次のいずれかに該当する者であること。

イ 贈与を受けた時に日本国内に住所を有すること。
ロ 贈与を受けた時に日本国内に住所を有しないものの日本国籍を有し、かつ、受贈者又は贈与者が贈与前5年以内に日本国内に住所を有したことがあること。
ハ 贈与を受けた時に日本国内に住所も日本国籍も有しないが、贈与者が日本国内に住所を有している。

(2)贈与を受けた時に贈与者の直系卑属であること。

なお、直系卑属とは子や孫などのことですが、子や孫などの配偶者は含まれません。

(3)贈与を受けた年の1月1において20歳以上であること。

(4)贈与を受けた年の合計所得金額が2,000万円以下であること。

(5)住宅取得等資金とは、受贈者が自己の居住の用に供する家屋を新築若しくは取得又は自己の居住の用に供している家屋の増改築等の対価に充てるための金銭をいいます。

なお、居住用の家屋の新築若しくは取得又はその増改築等には、次のものも含まれます。

  • その家屋の新築若しくは取得又は増改築等とともにするその家屋の敷地の用に供される土地や借地権などの取得
  • 住宅用の家屋の新築(住宅取得等資金の贈与を受けた日の属する年の翌年3月15日までに行われたものに限ります。)に先行してするその敷地の用に供される土地や借地権などの取得

特例を受けられない場合

ただし、受贈者の一定の親族など受贈者と特別の関係がある者との請負契約等により新築若しくは増改築等をする場合又はこれらの者から取得する場合には、この特例の適用を受けることはできません。
受贈者の一定の親族など受贈者と特別の関係がある者とは、次の者をいいます。

(1)受贈者の配偶者及び直系血族
(2)受贈者の親族((1)以外の者)で受贈者と生計を一にしているもの
(3)受贈者と内縁関係にある者及びその者の親族でその者と生計を一にしているもの
(4)(1)から(3)に掲げる者以外の者で受贈者から受ける金銭等によって生計を維持しているもの及びその者の親族でその者と生計を一にしているもの

(6)居住用の家屋及びその増改築等の要件

①居住用の家屋の要件
居住用の家屋とは、次の要件を満たす日本国内にある家屋をいいます。
なお、居住の用に供する家屋が二つ以上ある場合には、贈与を受けた者が主として居住の用に供すると認められる一つの家屋に限ります。

家屋の登記簿上の床面積(区分所有の場合には、その区分所有する部分の床面積)が50平方メートル以上240平方メートル以下であること。
購入する家屋が中古の場合は、次のいずれかの要件を満たす必要があります。
(イ) 耐火建築物である家屋の場合は、その家屋の取得の日以前25年以内に建築されたものであること。
(ロ) 耐火建築物以外の家屋の場合は、その家屋の取得の日以前20年以内に建築されたものであること。
(ハ) 地震に対する安全性に係る基準に適合するものとして、一定の「耐震基準適合証明書」、「住宅性能評価書の写し」又は既存住宅売買瑕疵担保責任保険契約が締結されていることを証する書類により証明されたものであること。
(ニ) (イ)から(ハ)のいずれにも該当しない家屋の場合で、その家屋の取得の日までに同日以降に耐震改修工事を行うことについて
所定の手続きをし、かつ、贈与を受けた年の翌年3月15日までに、その耐震改修によりその住宅用の家屋が耐震基準に適合することとなったことにつき、一定の書類で証明されたものであること
床面積の2分の1以上に相当する部分が専ら居住の用に供されるものであること。

②増改築等の要件

特例の対象となる増改築等とは、贈与を受けた者が日本国内に所有する自己の居住の用に供している家屋について行われる増
築、改築、大規模の修繕、大規模の模様替その他の工事のうち一定のもので次の要件を満たすものをいいます。

増改築等の工事に要した費用が100万円以上であること。
なお居住用部分の工事費が全体の工事費の2分の1以上でなければなりません。
増改築等後の家屋の床面積の2分の1以上に相当する部分が専ら居住の用に供されること。
増改築等後の家屋の登記簿上の床面積(区分所有の場合には、その区分所有する部分の床面積)が50平方メートル以上240平方メートル以下であること。
増改築等に係る工事が、一定の工事に該当することについて、「確認済証の写し」、「検査済証の写し」又は「増改築等工事証明書」などの書類により証明されたものであること。

(7)非課税限度額

平成27年1月1日から平成31年6月30日までの間に住宅取得等資金を贈与により取得した場合における受贈者1人についての非課税限度額は、住宅の種類や住宅用家屋の取得等に係る契約の締結がいつになるかにより異なることとなりました。
各年分の非課税限度額は、次の表のとおりとなります。

下記の場合(以下、「住宅資金非課税限度額」といいます。)



(8)この非課税の特例を受けるための手続き

課税の特例の適用を受けるためには、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に、非課税の特例の適用を受ける旨を記載した贈与税の申告書に計算明細書、戸籍の謄本、登記事項証明書、新築や取得の契約書の写しなど一定の書類を添付して、納税地の所轄税務署に提出する必要があります。

社会保障・税番号制度〈マイナンバー制度〉が導入されたことに伴い、個人番号を記載した各種申告書、申請書、届出書等を提出する際には、個人番号カード等の一定の本人確認書類の提示又は写しの添付が必要になります。


※平成30年4月1日現在の法令に基づいて作成しております。