相続のホームドクター30選

相続手続の流れ③「相続放棄・限定承認(3ケ月の熟慮期間の見極めを)」


相談者


ところで、「相続放棄」について、詳しく教えてください。


相続税のホームドクター


民法は、相続放棄や限定承認をしようとする場合は、自己のために「相続の開始があったことを知った時から」三カ月以内に改定裁判所に申述して行なう、とされています。

この三カ月は熟慮期間とも言われ、相続放棄をするか、限定承認をするか、を見極める期間とされています。
相続人は、相続開始の時から被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継するので、債務も相続することとなり、被相続人の財産内容が債務超過の場合もあります。
この様な場合に、相続人を債務の相続から解放するため、相続放棄の制度があるのです。

三カ月の熟慮期間は、被相続人の財産内容を調査し放棄するか、どうかの判断をする期間とされているのです。
この三カ月というのは「相続の開始があったことを知った日から三カ月以内」ということです。
普通は親の死に目には立ち会えなかったとしても、翌日には知ってることになります。

長期間、外国旅行するなどして、知ったのは三カ月後なんてこともありますが、あくまで「知った日」が起算点。
この熟慮期間は「自己のために相続が開始した時」から、更に加えて「熟慮期間は相続人が相続財産…の存在を…通常知ることのできる時から起算…」という最高裁の判例が出されました。
この判例の熟慮期間の起算点が一つの流れとなったのではないでしょうか。

例えば、ちょっと長くなりますが、こんなケースではどうでしょう。
別居して長年音信不通であった無資産浮浪の父親、今でいう「ホームレス」か、の死亡を知ったのが死後三年六カ月、債権者から、三カ月の熟慮期間が経過しているから、単純承認したことになるとして、債務の履行を請求された事件。

これについては、熟慮期間の開始は「少なくとも積極・消極財産の存在を確知することを要す…」と高裁判決だが、請求を棄却した判例がある。

複雑な家系や、相続財産の内容が多岐にわたる複雑な事例では三カ月の熟慮期間で判断が困難な場合には、原則として熟慮期間内に被相続人の住所地の家庭裁判所に、熟慮期間伸長の申立てをすることとなる。

伸長期間は事案に応じ三カ月~六カ月程度迄伸長が認められている様です。
相続放棄は、債務超過の相続財産を承継したくない、という場合の外、遺産承継を潔し、としない場合や、特定の相続人に単独相続させるために利用される例も多い。

相続人が放棄すると、その者は最初から相続人とならなかったとされるので、放棄しなかった配偶者以外の相続人の法定相続分が増えることになります。

さて、債務超過の相続財産放棄のケースでは、被相続人に配偶者、子、親、兄弟姉妹がある場合、先ず配偶者と第一順位の相続人である子が放棄すると、第二順位の親が相続人となり、親も放棄し、兄弟姉妹も放棄する、ということにならないと完全に放棄したことにならないので要注意です。

この様な場合、第二、第三順位の相続人の熟慮期間の起算点は先順位の相続人全員の放棄があったことを知った日とされています。
普段、付き合いのない兄弟姉妹の資産状態を知り得るべき立場にないのが一般的である、と考えると熟慮期間の起算点は判例の如く判断してもらいたいと思われるのではないでしょうか?

さて、この様な「熟慮期間」に放棄又は限定承認の申立てなき場合には、単純承継をしたこととされ、債務超過の相続財産も全て承継しなければならないこととなるのです。


※平成30年4月1日現在の法令に基づいて作成しております。