相続のホームドクター30選

相続の生前対策 前提条件⑧「事業承継は株式評価から」


相談者


私は会社(同族会社・資本金一千万円・未処分利益四千万円・株主構成は私80%・妻10%・長男10%)を経営しています。
そろそろ、引退が近くなり長男に譲りたいと思うのですが、注意点を教えてください。


相続税のホームドクター


経営の相続は、会社の相続すなわち事業承継です。
一般的に事業承継は、会社の株式の評価計算から始まります。
未公開会社(同族会社)の株式は流通性が無いため相続が発生してからの計算では思わぬ額になることが多く、負担の大きさに慌てることになります。
こうならないためにも、あらかじめ、自社の株価を把握しておく必要があります。

では、株価計算の具体的な方法について紹介します。
一つ目の方法は、純資産価額方式(図1)です。
この計算方法は、会社の貸借対照表の各資産及び負債を、評価する時点における相続税評価額によって計算します。
これにより、算出された評価額が純資産価額です。
この純資産価額を発行済株式総数で割り、一株あたりの評価額を算定する方法です。

また土地等については、帳簿価額と相続税評価額(三年以内取得不動産は、相続税評価額でなく、実勢価額)との差額から37%相当の法人税等を控除します。
具体的には、帳簿上の資本金の部五千万円の留保分と評価差額の含み益から、法人税等37%相当額控除後の六千参百万円との合計一億一千参百万円です。

次は、類似業種比準価額方式(図2)というものです。
これは、評価対象の会社と類似した業種の一株当たりの配当・利益・純資産を比準要素として計算した額に70%をかけて算出します。
ただし、土地保有特定会社(保有資産のほとんどが土地という会社)については、純資産価額方式によります。

他に、少数株主等の計算方式として配当還元方式というのもあります。これらのうち、どの方式で評価するかは、会社の規模、特徴等によって変わってきます。

評価額を下げる対策としては、時価と相続税評価額の差さ生じる不動産の取得や賃貨物件の建築、収益の良い部門を別法人にして移すことにより、内部留保を少なくする方法などあります。

他には、会社の不良資産・不良債権の整理や、オーナー代表者からの債務免除益による株主間の贈与問題も注意してください。


図1 純資産価額方式
図2 類似業種比準価額方式

※平成30年4月1日現在の法令に基づいて作成しております。