相続のホームドクター30選

相続基本編 遺産課税と遺産取得課税「税額は遺産全体で決まる」


相談者


そうすると、亡くなった甲さんの遺産に対する相続税額は、課税財産と法定相続人の人数と、法定相続分がわかれば計算できるということですね。誰がどれだけ遺産をもらったということは関係ないのでしょうか?


相続税のホームドクター


その通り。
相続税法では、まず個人の遺産に対して、原則として民法で定める法定相続人と法定相続分に応じて、税額が決まるという「遺産課税方式」を採用しています。
遺産分割がどの様に行われようと関係なく、その遺産全体が負担する税額が決まる、という仕組みになっています。
この税額を「相続税の総額」と言いますが、この「相続税の総額」を、遺産を取得した者に、取得した遺産額に応じて負担されることになっています。
これが「遺産取得税方式」です。


相談者


わかりました。前回の例で、甲さんの遺産に対する相続税の総額を、相続人それぞれが取得した遺産額で按分すれば良いということですね。そうすると、こうなるのでしょうか?

まず、妻乙さんは、3億円の財産と負債・葬儀費用の6000万円を負担したから差引2億4000万円の遺産を取得し、そして子ABCはそれぞれ、1億円、5500万円、4500万円を取得したとして、前回計算した「相続税の総額」10,060万円を按分計算で配分すれば良いのですね。


相続税のホームドクター


ちょっと待って下さい、Cさんが前年に贈与を受けた現金1000万円を忘れて年以内に贈与を受けた財産を加えなければいけないのです。
そうしないと、「課税財産価額」に加算したと同じ様に、Cさんの取得遺産額にも死亡前3の4人の取得遺産額の合計が相続税の総額を計算した時の「課税財産価額」と合わないのです。


相談者


でも、この1000万円は、贈与税の申告をして納税もすんでいるので、取得遺産額に加えれば相続税も課税されることになって変だと思いますが、二重課税にならないのでしょうか?


相続税のホームドクター


いやいや、そうはならなのです。
加算された贈与財産の贈与税は、その人の相続税額から控除すると言うことになっているので心配無用!


相談者


そうなんだ、それで安心。乙さんと子3人のそれぞれの相続税の負担割合は4億5000万円で、相続人それぞれの取得遺産額を割ったものになるのですね。そうするとその割合は、こうなるのでしょうか?


相続税のホームドクター


その通りです。
相続税の総額10,060万円にこの割合を掛けると各人別の税額が次の様に計算されます。


相談者

これで各人が納める税金が決まった、というわけではないのでしょうか?


相続税のホームドクター


はい、相続税法では、この金額をベースに、税額加算と税額控除が定められています。
次回はこれについて話をしましょう。



※平成30年4月1日現在の法令に基づいて作成しております。