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相続の生前対策編 Ⅱ 贈与と贈与税④「節税は長期間、計画的に」


相談者


生前での贈与についての注意点は、どのようなことでしょうか?


相続税のホームドクター


前回の負担付贈与や低額譲渡は、「父子間、その他の親族間」で行われるのが通例で、この規定が適用されることとなります。利害相反する第三者間の取引での売買や、公開市場においての売買では、時価に比べ、著しく低い価額の取引であっても、「課税上弊害があると認められる場合」を除き、原則として低額譲渡による贈与税をしないとされている。

「負担付贈与」については思わぬ落とし穴があるので要注意!ということを言っておきたい。アパートを「単純贈与」をしたという心算で「相続税評価額」によって申告したところ、「時価評価課税」を受ける場合もある。

即ち、アパートの賃貸借契約では、借家人から敷金・保証金を収受するのが普通だ。このアパートを贈与なり、譲渡した場合にこの敷金・保証金債務は民法上、アパートの所有権と共に、譲渡人に移転するとされている。

したがって、受贈者はアパートと共に敷金・保証金債務を負担することとなり、まさしく「負担付贈与」となるわけだ。
この場合のアパートの評価は「時価」即ち「再建築価額一償却費」となり、単純贈与の場合のアパートの評価額「固定資産税評価額―借家権相額」と比べると、大幅に高い評価となる場合もある。特に、建築年次の新しいものがそうだ。「こんなはずではなかった」とならない様に「預り敷金、保証金」は、受贈者が引き継がないことを入居者・贈与者・受贈者が同意したことを明文で明らかにしておくか、贈与者から受贈者に敷金等を現金交付して決済しておくことが肝心です。

シリーズの、まとめとして「贈与」をする場合の節税原則について話をしましょう。

第一法則「贈与は計画的に、長期間・多年間で贈与せよ。」
贈与税の税率は相続税と同じく累進課税で、相続税率と比べ、贈与税が多くなると急速に高税率となる。一人の者に対する多額の贈与は多額の税負担となる。

第二法則「できるだけ多くの者に贈与せよ。」
一人の者に贈与するより、多人数に贈与することによって、第一法則と同様の効果が得られる。但し、贈与者の親族の状況によって受贈者が限られる。贈与者の配偶者、息子である後継者、その子供、即ち孫。事情によっては後継者の配偶者位までが贈与の対象者となるだろう。

第三法則「相続時精算課税制度の非課税枠二千五百万円に惑わされるな。」
平成十五年改正で創設された「相続時清算課税制度」は、相続税対策にはならないと銘記されたし。

第四法則「不動産の贈与は贈与税以外の税負担などを考慮せよ。」
不動産取得税・登録免許税や登記手数料負担があることを忘れないで。

第五法則「贈与税の配偶者控除制度を活用せよ」
婚姻期間二十年以上で居住用不動産か、その取得資金二千万円に基礎控除の百十万円を加えた額が非課税となることは解説済みだ。この特例は一生に一度しか適用できないので、非課税限度まで一度で贈与すること。


※平成30年4月1日現在の法令に基づいて作成しております。